激辛浅草ガイド
「ブクロ」、「ノガミ」、「ジュク」はそれぞれ、「池袋」、「上野」、「新宿」
の隠語です。各々何となく想像できる呼称ばかりですが、
浅草の隠語である「エンコ」の語源は、少し難解です。
かつて、六区の映画館通りには「ひょうたん池」がありました。
現在の競馬会館(場外馬券場)の場所であり、その昔、三島由紀夫の
短編小説「百万弗煎餅」の舞台にもなった、「新世界」という娯楽会館が
建っていたこともあります。
まだひょうたん池のあった頃の私の記憶には、新劇場という映画館の
切符売り場の鉄柵にぶら下がって宙返りをしていると、観音様の方角
から昇る朝日がまぶしかったことを鮮明に覚えています。
その一帯は「浅草公園」と呼ばれ、未だテレビが一般家庭に
普及していない時代の娯楽の王者、映画興業の中心点で、
「エンコ」と親しまれてきました。
そうです。
「公園六区」を逆さまに読んで省略したのが「エンコ」の語源です。
浅草の繁栄は映画の興行とともに始まり、
映画の衰退とともにその灯火は消えました。
かつての名残の縁日や植木市、ほうずき市などのお陰で
人出はまずまずですが、歓楽街としての活気に乏しいことは
否めません。
よく「浅草はやくざが多く、怖いところだ」といわれます。
確かに人出が少なくなったぶん、対人口比ではやくざ密度は
高いといえるでしょう。
結果として素人が何らかの事件に巻き込まれる可能性が高いのです。